月: 2022年9月

富士山の大噴火と未曾有の大災害

 宝永4年(1707年)10月4日の午前10時ごろ,太平洋沖を震源地とする巨大地震が日本列島を襲いました。マグニチュード8・4と推定され,震度6以上と思われる地域は,駿河から四国の端にまで及び,房総から九州に至る太平洋沿岸を津波が襲ったのです。
 富士山南麓では,地割れで地下水が噴き出したり,山崩れで集落が全滅するなど,大きな被害を出しました。その山崩れは富士川を塞き止め,3日夜には決潰して濁流を駿河湾へと押し出し,海上のはるか先まで濁流の帯が続いたといいます。大地震の翌日の10月5日の午前8時ごろ,再び富士山麓を中心に巨大地震が発生しました。この2日間の地震で,少なくとも死者2万人,流失家屋2万戸,全半壊等の家屋の被害は10万戸を超えたと推定されています。
 富士山が突然大爆発を起こしたのは,地震からおよそ50日後の,宝永4年11月23日のことでした。頂上からの噴火ではなく,火を噴いたのは6合目付近の南東斜面でした。噴火は12月8日の夜半まで続き,山麓の村々を焼いたり灰に埋めたりしただけでなく,駿河・相模・武蔵の国々に,降灰による未曾有の被害をもらしたのです。噴火のあとには巨大な噴火口と,その縁(ふち)に盛り上がった新山・宝永山(ほうえいざん)ができました。
 西風に運ばれた火山灰が江戸の町に降りはじめたのは,大噴火の日の11月23日の午後3時ごろからです。新井白石の『折たく柴の記』によれば,はじめは鼠色の灰が降り,次第に激しくなり,やがて夕立のごとく黒砂が屋根を叩き,江戸中が真暗になったといいます。白石は講義中でしたが,燭(しょく)をともして授業を続けた,と同書に書き記しています。風下に当たる富士山東麓の被害は甚大で,須走村(すばしりむら)などは,火山灰や火山礫に埋まって全滅しました。当時の記録によれば,山麓では3尺から5尺(約90センチから1・5メートル)灰が積もったといいます。
 昭和36年(1961年)に御殿場市(ごてんばし)の中畑(なかばたけ)で発掘された住居址を見ますと,火山灰の深さは約2メートル,その下に細かな軽石が15~20センチの層をなしていました。この厖大(ぼうだい)な火山灰は,田畑を埋め尽くしただけでなく,雨で酒匂川(さかわがわ)に流入し,川底を押し上げました。このため大雨のたびに氾濫し,足柄平野(小田原市)に洪水をもたらすという,二次災害を招いたのです。
 この降灰被害をもろに受けたのが,小田原藩領の農民でした。潰滅的な打撃を蒙った小田原藩では,なす術(すべ)がありません。そこで藩内104ヶ村4000人の農民たちは,幕府に救済を求めました。幕府は,小田原藩による自力復興に困難を認め,宝永5年閏(うるう)正月,藩領のうち190ヵ所5万6千石分を上知(あげち)します。すなわち,その分を天領に組み入れ,幕府が直接復旧工事に当たることにしたのです。
 その責任者に任命されたのが,関東郡代の伊奈半左衛門忠順(ただのぶ)です。
 幕府は諸大名に対し,石高百石につき二両宛の国役金を賦課し,計48万両余が集まったといいます。だが実際に復旧工事に導入されたのは16万両にすぎませんでした。もっともらしい名目を立てて増税し,ちゃっかり他に流用するという国家の体質は,今も昔も変わりません。しかし伊奈忠順は,農民救済のために奔走し,独断で駿府の代官所の米蔵を開け,各村々の窮民たちを救済するのです。そのため忠順は罷免され,正徳2年(1712年)2月,切腹して自ら命を絶ちました。罹災地がすべて旧に復したのは,30年後のことでした。

夏と言えば怪談 ―雪女(後編)―

前回の続きです。

外で倒れていた女を助けた男は
その女と結婚し,一緒に幸せな冬を過ごします。

しかし,季節が移り変わり始めると,
妻の様子に異変が現れます。
(原文は少し長いので,短く書き直しています。
 和訳:カルチャー・プロ英語担当T)


***
As spring comes and the weather got warmer,
the young wife became weaker and thinner.
春が近づき暖かくなると
若い妻は次第に弱ってやせ細っていきました。

The young man thought that she was lonely
so he decided to throw a spring party for her.
夫は妻が寂しい思いをしていると思い
妻のために宴を開くことにしました。

For the party, he invited many of his friends.
夫は宴に彼の友人を大勢招待しました。
***

そして,宴の途中で
男は自分の妻の姿が見えないことに気がつきます。
名前を呼んでも返事がありません。

ある部屋で,男は妻が着ていた着物を見つけます。
(ここのみ原文通りに書いています)





***
There was only her kimono,
lying in a pool of water in front of the stove.
***





ちょっと待って。
ストーブ?
もう一度確認しましょう。



***
There was only her kimono,
lying in a pool of water in front of the stove.
妻の着物はありました,火鉢の前の水たまりの中に。
***




なんと,雪女,暖をとって溶けてしまいました。


最初から最後まで覇気のない雪女ですね。
それにしても,彼女の目的は一体…
(もはや怪談ではなくミステリー?)




今回ご紹介した,怖さ要素ゼロのThe Snow Wifeは
海外の本屋さんで見つけた
世界の童話を集めた本に書かれていました。

この本には,日本の昔話として
「一寸法師」と「浦島太郎」も入っています。
こちらも想像とは違った展開が面白いので
いつか機会があったらご紹介したいと思います。



雪女では残念ながら涼はとれませんでしたが,
この童話集はちょっと不思議な本として
これからも大切にしていこうと思います。
〈英語担当T〉


Retold by Neil Philip. Illustrated by Nilesh Mistry. The Illustrated Book of Fairy Tales. Great Britain, Dorling Kindersley, 1997.

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編集者のひとりごとを更新しました

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