#国語

赤い手紙と白い嘘

「赤」と聞くと何を思い浮かべますか。一般的には「情熱」「緊急」「太陽」などエネルギーを感じられるものが多いのではないでしょうか。編集の仕事をしていると「赤」はもっぱら「赤字」。たくさん書かれるとげんなりします。

色が組み合わさって新たなイメージを生むこともありますね。 例えば「赤」と「白」だと「おめでたい」。英語でも他の語と組み合わさって特別な意味を表す色があります。

Every moment, red letter

こちらはディズニー映画『アラジン』のA Whole New Worldの歌詞の一部です。A Whole New Worldを歌うシーンといえば、アラジンとジャスミンが魔法の絨毯に乗って飛び回る、あの壮大で美しいシーンです。

「こんな歌詞あったかな?」と思う方もいらっしゃると思います。英語でかつ掛け合いの部分なので、分かった方はかなりのディズニー通ですね。この歌詞、every moment=一瞬一瞬/red=赤い/letter=手紙、と脳内変換するとどうもあのシーンにそぐわない意味になってしまいます。

私が小さい頃、手紙は赤で書いてはいけないと言われました。古い考えなのかもしれませんが「赤いペンで書く手紙は絶交」を意味するからです。幸い、これまで赤いペンで手紙を書いたり、そんな手紙をもらったりしたことはありませんが、「Tさんへ」と赤字のメモをもらうと毎回ちょっとドキッとします。

ちょっと脱線しましたが、この歌詞のポイントはletterの意味です。このletterは「手紙」ではなく「文字」。赤い文字はどこで見るでしょう? 会社でも家でも毎日1回は目にしているはずです。そう、カレンダー! カレンダーで赤字になっている日は、祝日などの大切な日ですね。このことから、英語ではいつまでも覚えておきたい大切な日をred-letter dayと言います。

つまり、歌詞で言っているのは、アラジンとジャスミンが会っている時間は一瞬一瞬が大切な、忘れられない時間ということです。絶交しなくてよかった。めでたし、めでたし。

白も特別な意味を持つときがあります。

a white lie to protect the bigger truth

直訳すると「白い嘘」。なんだかピンときませんが、white lieとは「たわいもない嘘」「相手を傷つけないための嘘」を指します。blackの反対のwhiteにはpure(純粋)、さらにgoodやright(よい、正しい)、といったイメージがあるので、礼儀的な嘘といった意味になったのだと思います。上の英語は「もっと大事な真実を守るためについた、たわいもない嘘」といった感じでしょうか。

日本語だと「白い嘘」はないですが、「真っ赤な嘘」はありますね。これはどういう理屈なのでしょうか。国語科担当に聞いてみました。

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日本語の「赤」という言葉には、接頭語として名詞につき、「全くの」「明らかな」という意味を表す用法があります。「赤の他人」「赤恥」などと使います。「真っ赤な嘘」は、ここから派生して、さらに意味を強めた「ごまかしがきかないほど明らかな○○」という意味になるのです。「真っ赤な嘘」というのは「疑いようもなく完全に嘘!」ということですね。

―国語科担当Oさん

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同じ色でも、文化が違うと意味も全く異なるのが言語のおもしろいところですね。

次回もお楽しみに!

〈英語科担当T〉

#国語 #英語 #英語の歌詞 #英語の色

面白き こともなき世をおもしろく (  )ものは心なりけり

司馬遼太郎『竜馬がゆく』での高杉晋作の最期の描写をご紹介します。
結核の病状がいよいよ重くなった高杉が、辞世の句をよもうと筆をとります。

「面白き、こともなき世を、おもしろく」
辞世の上の句をよんだ。下の句に苦吟していると、看病していた野村望東尼が、
住みなすものは心なりけり」
と詠んだ。高杉はうなずき、
・・・面白いのう。
と言って静かに眠った。それが高杉の最期であった。

(文春文庫『竜馬がゆく』表記ママ)

天才革命家として破天荒な活躍をした高杉ですが、
27歳という若さで病没しました。
野村望東尼とは、高杉らの討幕運動を支援した幕末の女流歌人です。

私は詩歌の心得などはまったくありませんが、
高杉らしい「やんちゃ」な上の句に対して、
望東尼が優しく、かつ風雅に下の句を呼応させるという描写が印象的でした。

国語担当にも聞いてみました。

(彩る)ものは心なりけり でしょうか。
心持ち次第で極彩色の毎日が送れ…たらいいな、と思っております、はい。
「色取る」とも書けますが、個人的には「彩る」のほうが
字面が可愛くて好きです。

ちなみに「彩」は中学学習漢字ですが、
「いろど-る」は中学では学習しない読み方です。
無理やり国語担当ぽい豆知識を入れ込んでみました。

――国語科担当Kさん

編集者としては、
「面白き」「おもしろく」、
「上の句をよんだ」「と詠んだ」などの
閉じ開き表記の不統一も気になるところです。

一読者としてはこれも味に思えます。

皆さんはどのような下の句を思いつかれたでしょうか? ご意見いただけますと幸いです。
〈英語担当S〉

桜と鶯

#国語 #俳句 #短歌 #小説